Made Again 10 (Remember My Name)

 「全然目を覚まさないからちょっと心配になってたんだ。」

小さなラジオから手足が生えたようなものは快活な声でしゃべりだした。

「扉が開いたと思ったら突然あたりが光だして今度はどどーんって衝撃があったんだよ、もう爆弾か何かが炸裂したんじゃないかっていうぐらいの衝撃だったんだよ、なんせ僕の体がバラバラになっちゃってね。どんどん意識がなくなっていってあー死んじゃうんだ•••って思ったんだけどその瞬間目が覚めたんだ。助かったーってほっとしたけど、どうも床が近いんだよね。最初は結構背が高かったんだよ、たぶん、君ぐらいかなあ、最初って言っても数時間前なんだけどね。それがあの衝撃から気づくとこんな背丈になっちゃってるんだよね。困るよね、何が困るかって歩いても歩いてもなかなか前に進まないんだよね、足短いから。そしてすぐそばで君が倒れてたんだよ。いままで誰もいなかったのにさ。動かいないから死んでるのかなって思って恐る恐る近づいたんだけど胸が上下に動いて呼吸はしてるようだからホッとしたよ。起こそうと思って声かけたんだけどまったく起きなくてね。心配してきたところで、お目覚めさ。気分はどう?」

畳み掛けるような話についていけず、彼女はきょとんといた顔をしていた。

「あれ〜?おかしいな。音声がでてないのかな。」
その小さなものはお腹付近にあるつまみをいじっている。
「んん。周波数はあってるぞ。感度も良好、しっかり受信してる。音声ボリュームも適度な大きさだ。」
そういって彼女の前で「どうだ!」といった具合に腰に手を当てて仁王立ちをする。
「…言葉だ、言葉が通じていないんだ。なるほど。何語なら通じるのだろう?そもそも僕は自分自身の記憶がないから自分が何語を話してるかわかんないぞ。そうだ、ボディランゲージだそれでなんとか会話を」
小さいものは一人で喋って一人で悩みだした。

そうこうしているうちに彼女は屈みこんで小刻みに震えだした。

「どこか痛むの?大丈夫かい?」

「ふふふ…ふふ…あはははは!」

突然彼女はお腹を抱えて笑いだした。

「ふふふ!もう滑稽ね!入る隙のないおしゃべりから私に言葉が通じないっていう勘違い。それにあなたのサイズにコミカルな動きは素敵ね!」

「な、なんだ、通じてたのかい。」

小さなものはあたふたしながら言った。

「理解してたらもっと早く話してくれてもいいのにずっと黙ってるなんてひどいよ。」

「ふふふ…ごめんなさい。あまりにも間のないおしゃべりだったから返すことができなかったのよ。しかもこんな小さくて可愛らしいものがパワルルにまくし立てるとは思わなくてね。ふふふ…」

簡単に弁解するとさっと向き直って言った。

「さてと。」

彼女たちはじっとお互いを見つめた。

「あなたは誰?」
「君は誰?」

質問がかぶってしまった故に少し気まずくなって、

「私は…」
「僕は…」

と答えもかぶってしまった。

「おっと、これじゃあ安っぽい恋愛ドラマの展開だね。もっとスマートに自己紹介といこう。じゃ、レディファーストということで。」

小さいものはホテルのフロント係のように(お先にどうぞ)というようひらりと手を動かした。

「おほん、レディファーストの部分な納得いかないけど安っぽい恋愛ドラマみたいなのは同意するわ。」

そして彼女は深呼吸をし、姿勢を改めた。

「…実は目が醒める以前の記憶がないの。なぜここにいるのか、ここがどこなのか、自分の名前すら思い出せないのよ。全くの空っぽ。どこで生まれたとか、両親や友達とか自分がどんな人間だとか全然わからないのよね。」

今にも泣き出しそうな顔になる。

「なんか嘘みたいでしょ?まるでひと昔前のB級映画の主人公になった気分。あ、でも恋愛ドラマの展開やB級映画のつまらなさはなんとなく理解できるわ、意味ないけどね。」

彼女は自嘲気味に笑った。

「それは奇遇だね。実は僕も記憶がないんだよ。」

いつの間にかあぐらをかいて座っていた小さなものはポンと膝をたたいて言った。

「僕は昨日、気がついたらこの回廊にいたんだ。その時点で今の君と同じでまったく記憶がなかった。思い出そうとしても無駄だったしその時は声も出せなかったんだ。出そうとするとノイズばかりになっちゃってね。自分の手足を見ると人形みたいだった。日が落ち出してあたりがどんどん暗くなっていってとても不安だった。しばらくすると話し声が聞こえたんだ。一人きりじゃあ不安で押しつぶされそうだったから誰かに会いたくて声が聞こえる方に歩いて行ったんだ。すると光でできた白い糸がいっぱい絡み合っっていたところに扉があってそこから話し声が聞こえてきたんだ。僕がノックをすると話し声が止まっちゃって、それで思い切って声をかけたんだ。「誰かいるの?」って。その声はノイズではなくてしっかり声になったみたい。そしたら扉が開いたとたん…あとは君が目を覚ました時に話した内容だよ。」

はきはきとした口調に途切れない会話からは彼女のような悲壮感は微塵も感じられなかった。

「あなた、すごく元気がいいのね。」

彼女は呆れた顔でぼそりといった。

「しかしお互い自分のことがわからないんじゃ、自己紹介にならないわね。名前も思い出せないし、いつまでも『君』『あなた』なんて呼び合うのも滑稽だし。」

「僕はスティーブでいいよ。」

小さなものはさらっと言いのけた。

「あなた、思い出したの?」

彼女はびっくりして問うた。

「なんとなく浮かんだだけだよ。ほかにも候補がいっぱいあるよ。ジェームズ、ジョン、マイクル、ザック、トニー、トム、アレクザンダー…」

「ストップ!わかった、わかったわ。スティーブでOKよ。」

慌ててその名前に同意した。

ほっておけば思い付いた名前を延々聞かされるだろうということは今までの会話から想像できた。

「しかし安易にスティーブなんて名前にしちゃって、どうして…いえ、なんでもないわ。さあ、私の番ね。」

腕組みをしてむすっとした顔をしてみる。

「どうせ思い出せないんだし、とりあえず適当に思い付いた名前でいっか。」

がっくり肩を落として弛緩したやる気のない顔でいった。

「そうね、マリー。そう、マリーでいいわ。よろしくねスティーブ。」

マリーはにっこり微笑んだ。

「よろしくマリー。お会いできて光栄だよ。」

スティーブは紳士っぽく軽くお辞儀をした。

「ところでマリー、どうして僕がスティーブて名前にしたか聞きかせてあげるよ。」

「いえ、けっこうです。」

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続く
2015-01-31 : Made Again : コメント : 0 : トラックバック : 0
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泉 坂

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