風気分測定士

webアンソロジー季刊誌「carat!」 vol.2 夏号 参加作品
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「北西の風、または西の風、やや強く…、か。」

西岸エリア未開地第58風気分測定ポイントでヨアヒムは呟いた。

「西岸エリアはひどい乾燥地帯だな。喉が渇いてしかたないや。」

風気分測定士に任命されて初めての未開地での測定にかなり緊張していた。西岸エリアは乾燥地帯で荒野が続く不毛の大地。追われる身のならず者たちが徒党を組んで潜んでいると囁かれたり、未確認の危険生物がいるとも言われている。

「未開地に入って3日か、なかなか足取りがつかめないなあ。やっぱり以前の測定ポイントから外れて独自に調査したほうがいいかもしれない。危険かもしれないけれど、少し北に移動して新しいポイントで測定してみよう。行ってくれるかい、トラビ?」

ヨアヒムは今回の測定用に充てがわれた移動用爬虫類に声をかけた。

「ギャ?」

トラビと呼ばれた移動用爬虫類はヨアヒムに擦り寄り首元を差し出した。

「ほんとにお前は首を撫でられるのが好きだね!よしよし。」

ヨアヒムは周囲の測定士から移動用爬虫類に名前を付けるなんて異常だよ、と言われていた。
しかし、彼が大切にしているコミュニケーションには、どうしても名前を付けることが必要だった。
悪く言う人間でも、意思疎通が難しい移動用爬虫類でも、コミュニケーションの連続がもっとも大切な事柄であり、仕事の質、そして人生への喜びに大きな影響があると考えていた。

トラビは満足しているようで目を閉じて喉をぐるぐる鳴らしている。
ヨアヒムはトラビの首にぎゅっと抱きつき、手を離して言った。

「そろそろ行こうよ、絶対僕たちが見つけるんだ。未開地のシルフを。」

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2016-06-09 : 風気分測定士 : コメント : 4 : トラックバック : 0
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