Made Again 09 (Don't Look Back - Turn Left)

 地平線から黄金の光が差し込み、辺りの闇を切り裂きながらにっこり微笑んだ太陽は貫禄たっぷりに徐々に姿を見せ始めた。
この地は朝を迎える。

巨大な塔の回廊にも柔らかい光が差し込み、床に倒れている彼女の体を照らして温め、彼女の意識を覚醒させていく。
彼女は目を開かずにしばらくそのままでいた。

(少し前に同じように床に寝転がっていたような気がするわ。…いえ、ずっとずっと昔に感じる。)

床に接した頬は冷たいままだった。

(暖かいわ、とっても。でも、何か変だわ。)

彼女は閉じていた目を更にぎゅっと瞑って考えた。

(おかしいわ、何も思い出せない。自分のことが何も思い出せない。どこかに居たような記憶はある。なにかがあった記憶はある。でも明確なことが何も思い出せない。)

ごつんと床に頭を打ちつけて自分の記憶を辿っていこうとする。

(ダメだわ。自分の名前もわからない。さっき目が覚めた所から前の記憶がない。なぜここで倒れているのかも…ここで?)

目を見開いて勢いよく体を起こした。
きょろきょろと辺りを見回してみる
古びた回廊の真ん中で彼女は倒れていた。
あたりにはいくつかの仮面や砕かれたタイプライター、無数の金属片が散らばっていた。
回廊の先は奥まで見えないほどに続いているように見えた。
彼女はため息をついて大きく開かれた開口部からぼんやりと流れる雲を見つめた。

「ここがどこだかわからない、私が誰だかわからない…か。」

ぼそりと呟く。
しかし彼女には不安や恐怖といった感情は湧いてこなかった。
ただ、自分の変化や周りの状況をすんなり飲み込んでいた。

「やあ、やっと起きたね。」

突然後ろから人の声が聞こえた。
一瞬、体が危険だと反応したが彼女の意思はそれを無視してすんなりと振り返った。
そこには…

何かがいた。

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続く
2014-12-19 : Made Again : コメント : 1 : トラックバック : 0
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Made Again 08 (Morpheus)

(暖かくもないし、寒くもない。

楽しくもないし、悲しくもない。

心地よくもないし、悪くもない。

どこかで感じたことがあるような感覚はあるけれど、明確なことは何も感じない。)



(立っているのか、寝そべっているのか、わからない。

飛んでいるのか、落ちているのか、わからない。

明るいのか、暗いのか、わからない。

目を開いているのか、瞑っているいるのか、わからない。

私が存在しているのかどうかも、わからない。

どこかで存在していたような感覚はするけれど、明確なことは何も浮かんでこない。)



(どこから来たのだろう。どこへ行くのだろう。

ここが終着駅なのか、ここが出発点なのか。

どれぐらいここにいたのだろう、どれぐらいここに居続けるのだろう。

ここが「私」自身なのか。)



(そもそも「私」とはなんだろう。

疑問は次々湧いてくるけど、泡沫のように消えていく。)



(小さな黒い点が浮かんで来た。

周りは真っ白だ。

ということは目を開いて見ている、「私」が存在するのか。

黒い点の対極には青い四角の物体が浮かんでいる。

その物体はチカチカ光りながらどんどん増えていきこちらに向かってくる。

そして何かを形作っていく。

そう、私が構築されていく。

ああ、何かを感じるわ。

目を閉じて、それを感じれば、それでいいわ…)

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続く
2014-12-10 : Made Again : コメント : 0 : トラックバック : 0
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ひとり帽子くんの待ちぼうけ



むむむ…



バスが来ませんな。

…。

matibo_ke.jpg
2014-12-04 : イラスト : コメント : 0 : トラックバック : 0
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Made Again 07 (Intersection )

 それが血だと思ったとたん、吐き気をもよおしてうずくまった。
「気分が悪くなっちゃったのね、大丈夫?あなただけの体じゃないから…」
黒い煙は心配そうな声を出して近寄ろうとした。
「来ないで!」
彼女は片手を前に突き出して相手を制し、大声で叫んだ。
咳き込みながら口から出た唾液を袖で拭い、ふらふらと立ち上がった。
横目でもう一度ビリヤード台の黒いシミを見たがすぐに視線を黒い煙に向けて言い放った。

「この場所は確かに私がしっている場所かもしれない。でもずっと昔の話で一度立ち寄ったことがあるだけよ。その時はこんなビリヤード台なんてなかったし、傷もシミも知らないわよ。」

「もう、仕方ないわね。じゃあヒントをあげる。」
まるでダダをこねる子供を諭すような口調で黒い煙は話しだした。
「あなたがこの世界や私を拒絶すればするほど、あなたには恐怖や恐れといった感情が湧いてくるの。しっかりと目の前にある現実を見据えてあるがままに受け入れることで、あなたには温かくて、そして静かな安息が訪れるのよ。私はただあなたを導く者。取って喰ったりしなわよ。」
少しおどけた口調に変わった。
「実はこれを言うのはルール違反に近いわ。でもこのままじゃあ埒が明かないし、あっちに行かれては元も子もないからね。かなりオブラートに包んでいるからぎりぎりセーフってとこかしら?」

彼女は首を傾げて思った。
(やっぱりこの声、そしてこのモノの言い方、知っているような気がするわ。)

「さあ、こちらに来て。帰りましょう。」

黒い煙から手のようなものがにょきにょきと伸びてくる。
彼女は後ずさりしながら言った。
「こんなおかしな世界に真っ黒な煙のあんたなんか受け入れることができるわけないじゃない。それに[あっち]って言ったわね。まだこんなおかしな世界があるって言うの?」

「その話はまた今度。スキャットを抱いてシナモンティーでも飲みながら話してあげるわ。」


「トントントン」
その時、どこからか何かを叩くノイズまじりの音が聞こえた。
彼女も黒い煙も押し黙って音のする方を見た。
部屋の隅にある半分朽ちたギターのアンプからだ。
マーシャルのロゴがきらりと光ったように見えた
ラジオのチャンネルを合わせるときのノイズが聞こえてくる。

「ザザザザーーー、ザザーー、ザ、ソ、ソコに、誰かいるの?」

ノイズとともに人の声がした。

逃げ出す機会をうかがっていた彼女はとっさにアンプに飛びついた。
アンプに触ったとたん、朽ちた外装は粉々になって消え去り、むき出しになった中の真空管は青く光っていた。

彼女はその中に一つの世界を見た。
吸い込まれそうな青空、空中に浮かぶ島、そこから滑空しながらどんどん地上に近づき生い茂った草原を凄い早さで突き抜ける。
やがて鬱蒼と茂ったジャングルに幾つもの支流をもった大河、壁のような山脈、無数の島々が浮かぶ海峡を飛び越え、幾つもの都市を尻目に終わりの見えない荒野へと入り込むと、頂上が見えない巨大な塔が見えてきてどんどん近づき、顔のようなレリーフを施した扉にぶつかって意識を取り戻した。

それはほんの一瞬の出来事だった。

「あなた、その体…」
黒い煙の声で我に返った彼女は自分の体を見た。
体が半透明になり、真空管内の世界が映し出されている。
そしてどんどん真空管の中に取り込まれていく。

彼女は全く恐怖を感じていなかった。
むしろ、寒々とした空気を感じるこの異様な世界よりも温かさを感じた。
行き着く先は元の世界ではないこともわかっていたが、今はただこの温かさを感じていたかった。

「本当にそれでいいのね?」
黒い煙は泣きそうな声で訪ねた。

もう声すらだせないほどに体を吸い込まれた彼女は横目で黒い煙を見た。
そこには、いままで何千回と見てきた人物が黒い煙から顔を出して涙を流していた。
目を見開いた彼女は何かを叫んだが、声にならずに真空管の中に消えていった。

その瞬間に青い光も消えた。
跡に残されたのはただの朽ち果てたアンプの真空管だった。

静寂だけが辺りを支配した。
しばらくすると黒い煙はどんどん膨張して室内を包み込み、扉を破って塔を飲み込み、そしてその世界を覆い尽くした。
しかし、闇の中にはあの真空管だけが残されていた。

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続く
2014-12-02 : Made Again : コメント : 0 : トラックバック : 0
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泉 坂

Author:泉 坂
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