Made Again 04 (Danger Zone)

 彼女はゆっくりと後ずさりしながら黒い煙を観察した。
逃げるのに精一杯で気づかなかったが、うっすらとひとの形をしているように見える。
テーブルと椅子にぶつからないように移動して煙との間にビリヤード台を挟んで対峙した。
黒い煙もそっとビリヤード台に近寄ってこちらを凝視しているようだ。

「…あなたは、何?」
彼女は低く警戒する声で言った。
「あら、まるで物を指していうような言い方ね。失礼な子。記憶が抜けているから私が誰だかわからないようね。」
母が子に諭すような物言いで煙は言った。
その言い方にカチンときたが会話をできるということがわかってどっと畳み掛けた。
「ここはどこなのよ!なんで洞窟や荒野なんかに私がいるのよ!へんな建物が建っていたら中に不釣り合いなパブなんかあるわけ?それにどうして煙だらけのあなたが私を追い回すの?わけがわかんなくて気が狂いそうよ!」

「まあ、かわいそうな子。急な変化についていけないのは当然よ。あなたはここにいてはいけないの。さあ、帰りましょう。あなたのいるべき世界へ。」

黒い煙は甘くやさしい猫なで声でささやいてゆらゆら揺れて近づいてくる。まるで手を差し伸べているかのように。

しかし彼女はおぞましい不快感を感じて身じろぎをした。
直感でこの煙は危険だ!と体が反応している。
高ぶる感情を押さえつけるように大きく深呼吸をする。
そして体を奮い立たせるように背筋をピンと伸ばして煙を真っ直ぐ見据えた。
「お断りよ。さあ、もう一度聞くわ。あなたは誰?そしてなぜ付きまとうの?ついでにここがどこだか教えてもらいたいわ。」
感情の一切を抑えて抑揚なく言った。
「…今のあなたは記憶が欠落しているのよ、だから私が誰だかわからない、そして私が誰だか説明しても信じない。付きまとうと言われるのは心外だけど、それはあなたが必要だから。そしてあなたも私が必要。ついでに言うと、ここはあなたのいるべき世界ではない場所。」

(予想通り、希望する答えはなし。)
彼女はどこかで聞いたことのある声だと思った。
「そう。じゃあ、私は私のいるべき世界に帰りたいのよ。どうやって帰るか教えてもらえるかしら?」
質問しながら辺りを見回す。
(この店が私のしっているパブであるなら出入り口は2つ。入って来た正面のドアとカウンター奥にある裏口。
店は半地下になっているので窓は無し。
正面のドアは煙の真後ろにあるので却下。ということは目指すは裏口。
しかし今までの非現実的な状況から裏口の先にあるものは未知数だ。
建物の外にでれるかもしれないが、またあの荒野に出たら次に向かう先は見当もつかない。
しかしここにいて得体の知れない煙とダンスを踊るつもりもないわ。)

「あなた、何も感じない?」
予想もしない質問を黒い煙が問いかけて来た。
「なんですって?」
彼女は眉間にしわを寄せて聞き返した。
「だから、このパブにいて何も感じないの?床に散乱した割れたグラスやちぎれた紐、このビリヤード台を見て…ほら、このフチの傷や黒ずんだ大きなシミがあるでしょ。何とも思わないの?」
逃げ道ばかりに気を取られていた彼女はゆっくりとビリヤード台を観察した。
フチのあちこちには激しくこすれたような傷跡があり、緑の盤面には大きな黒いシミが広がっている。
「黒いシミ?」
黒い煙には注意を払ったままビリヤード台のシミをよく見てみる。
「いいえ、赤黒いわ。…?」
かすかに鉄の匂いが漂っていた。

Made_Again_Act_04.jpeg
2014-10-21 : Made Again : コメント : 0 : トラックバック : 0
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2014_1017.jpg

うふふっ。
2014-10-16 : イラスト : コメント : 2 : トラックバック : 0
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ドキドキ

2年間ずっと貼り続けた壁のポスターを剥がしました。

むき出しになった無地のクロスは2年前と変わらぬ白さで、蛍光灯の光をまぶしいほどに反射している。

やっぱり白は良い。

何も無い。

だからこそ何が有ってもいいし、何を書いてもいいし、何を描いてもいい。

なんでもアリなのだ。

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白いクロスを見ただけなのに久々にドキドキしました(笑
2014-10-06 : 写真 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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あの頃のシルフィード(ひとり帽子くんの回想)

いつだったか

どこだったか

地平線まで見渡せる荒野で

ニンゲンが作った風車小屋が建っていて

自分たちの軌跡でくるくる回る風車を物珍しげに

クスクス笑って何度も通って風車を回す。

元気いっぱいシルフィード。

まだあの頃は、こんなにニンゲンの作った物は多くなかったね。

最近のシルフィードは、びゅんびゅん風を吹き立たせ、怒り顔で飛んでいく。

なんだかうっぷんが溜まってそう。

またあの頃の、元気いっぱいの笑顔が見たいなあ。

20140928.jpg
2014-09-28 : イラスト : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

泉 坂

Author:泉 坂
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